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コンセプト

  • 2018年11月30日
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“LCHっぽい”症状や特徴を写真で解説:皮膚や肺など多彩な症状編

あちこちに多彩な症状がみられる希少疾患・ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)(どんな病気なのかは「知っていますか?まれで不思議な病気、LCH(ランゲルハンス細胞組織球症)」をご覧ください)。

骨や皮膚、肺をはじめ、体じゅうに異変をきたす病気で、ほかの身近な病気とよく似た症状がみられることもあります。

今回も、LCHの症状について、国立成育医療研究センター 小児がんセンターの塩田曜子先生に解説していただきます。前回の「骨・軟部腫瘤編」に続き、今回は「皮膚・肺・尿崩症など多彩な症状編」です。(いしゃまち編集部)

※本記事は、一般向け医療情報サイト「いしゃまち」からの転載です(元記事はこちら)。

塩田曜子 国立成育医療研究センター

1.LCHの代表的な症状とポイント

1)皮膚

LCHの症状 皮疹

※実際の症例写真(全身)はこちらをご覧ください。

出血様丘疹

触るとザラザラと出っ張って赤く出血したようにみえる1-2mm程度の細かい隆起疹が、特に下腹部を中心に散在します。前胸部まで広がって、「ランニングシャツとパンツの中」の位置に出ることが特徴的です。さらに背部や手足、ときに手のひらや足の裏まで広がることがあります。

この鮮やかな色をした隆起疹は、0-2歳頃の乳幼児に多く認められるタイプで、まるで水痘(水ぼうそう)のときの皮疹に見えてしまうことがあります。

LCHの皮疹は何週間でも出続け、ステロイド軟膏を使ってもすぐに増悪してきます。隆起する皮疹の形状は、こどもによくみられるみずいぼ(伝染性軟属腫)や、眠れないほどかゆくなる疥癬(ヒゼンダニの感染による皮疹)にも似ていますが、LCHの丘疹は、さほどひどいかゆみではないようです。

また、首やわきの下、鼠径部(足の付け根)のしわがかなり赤くくっきりと目立つようになります。

成人の場合には、乳房の下のしわの部分や陰部などにもしつこい湿疹ができることがあり、じくじくただれてひりひりして、とても不快な様子となります。

脂漏性湿疹

生まれて数か月の赤ちゃんによくみられるような頭皮の脂漏性湿疹が、LCHの場合には少し大きい月齢になっても出現することが特徴的です。

ガサガサしたかさぶたが何度はがしてもフケのように出てきたり、じくじくしてべったりと髪の毛に貼りついたりします。このような湿疹が、頭頂部だけでなく、特にこめかみから耳の後ろの側頭部に、左右対称性にみられます。

軟膏のみではなかなか良くならず、乳幼児は掻きむしってとても機嫌が悪くなり、ひどいと頭皮の表面が広くむけてしまうこともあります。

これらの皮疹には、点滴や内服薬による治療がとてもよく効いて、数週間ですっかりきれいに治っていきます。

新生児や乳児の皮疹

生まれたての赤ちゃんの時から、全身に少し大きめ(5mm前後など)の紫色の丘疹があちこちに散らばってみられることがあります。欧米では、まるでブルーベリーマフィンのようだと表現されます。

このような先天性皮膚LCHの場合、無治療のまま経過を追っている間に、1-2か月ほどで全ての皮疹がきれいになくなっていきます(「自然消退」といいます)。

一方で、はじめは皮膚だけの単一臓器型の病変と思われていても、実は多臓器型の初期症状として皮疹が生じていることがあります。このタイプの場合には、数カ月のうちに急速に肝臓や脾臓などの全身臓器へと病変が広がって重症となることがあります。そのため、皮疹だけとはいえ、小さな赤ちゃんの場合にはその後1年間ほどは慎重に経過を追う必要があります。

2)肺

LCHの症状 肺の病変

はじめは肺野に無数のLCHの結節を生じ、次第に崩れて細かな肺胞を破壊して穴だらけとなり、結節状+網目状のパターンとなります。とてもやぶれやすく、気胸(肺の外に空気が漏れて胸郭にたまる状態)を繰り返すことがあります。

さらに進行すると、肺にはたくさんの穴があいた状態のまま線維の成分が増えて次第に硬くなり、蜂の巣のような「蜂窩肺(ほうかはい)」の状態となります。

成人では、タバコに関連して生ずる病態として古くから知られており、多くは禁煙によって軽快していきます。

また、小児では化学療法がとてもよく効く例を多く経験します。赤ちゃんの頃に気胸を繰り返してとても心配した重症例でも、小学校になって元気にプール教室に通うことができています。

一方で、在宅酸素療法が必要となるケースもあり、進行してしまう前に、早期診断と治療を行うことが必要な病態です。

3)口の内や消化管

「口の中に軟部腫瘤ができてミルクが飲みにくそう」、あるいは、「下顎の溶骨のために急に歯がぐらぐらしだして永久歯が抜けてしまった」といった例があります。

また、ひどく下痢が続いて蛋白漏出性胃腸症という重症の病態となることがあり、栄養障害/体重増加不良をきたします。

4)多飲多尿・尿崩症

尿量を調節する「抗利尿ホルモン」は、脳の奥にある視床下部で作られ、下垂体茎を通って下垂体後葉に蓄えられています。この付近にLCHの軟部腫瘤ができてホルモンの分泌を阻害してしまうと、小さなこどもでも毎日2-4リットル以上の多尿となり(通常はたくさん遊んだ日でも1-2リットル程度)、冷たい水を日中も夜中もたくさん欲しがるようになります。

この「尿崩症」という病態は、LCHと診断される前から、または、治療終了後、数年してから発症する場合があります。LCHに特徴的な、重大な晩期合併症のひとつであり、どうにかして発症を予防できないか、世界中の研究者が模索中です。

2.治療の工夫が必要なケース

強い治療の直後はよいけれど、少し治療を弱めたとたんに熱が出て、いったん軽快していた皮疹や骨腫瘤、肝脾腫が再増悪し、赤血球や血小板の輸血がたくさん必要となる、といった「治療抵抗例」があります。

リスク臓器浸潤のある乳幼児に多くみられ、早期に適切な治療法への変更が必要です。

3.最後に

たくさんのLCHのちびっこや先輩ママさんたちが、「こんな症状でとても困った、という経験をぜひ次の患者さんにつなげてほしい」と、臨床写真の提供にご協力くださいました。

医療者やご家族の方々が、「もしかしたらLCHかも」とすぐに思いつくことができるように、LCHの特徴をひろく知っていただけたらと思います。

塩田曜子 国立成育医療研究センター

国立小児病院血液科に7年間、閉院の2002年まで勤務。同年開設された国立成育医療研究センターに患者さんたちとともに引っ越した。現在、小児がんセンターで医長を務める。2014年に「こどもサポ―トチーム」を立ち上げ、小児がんのこどもたちの療養生活を多職種と連携し支えている。

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