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  • 2019年5月30日
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LCHの長期フォロー:主治医と一緒に、定期的にチェックしよう

ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は、乳幼児に多い病気です。しかしLCHや小児がんをはじめ、こどもの頃に発症して強い治療を行う病気の多くは、「一度治療すれば終わり」というわけではありません。病気や治療の影響が心身に出てきたり、再発のリスクがあったりするので、主治医が長期的に見守り、フォローする必要があります。

今回は、国立成育医療研究センター 小児がんセンターの坂本 謙一先生に、「長期フォローアップ」についてご執筆いただきました。(いしゃまち編集部)

※本記事は、一般向け医療情報サイト「いしゃまち」からの転載です(元記事はこちら)。

坂本謙一 国立成育医療研究センター 小児がんセンター

LCHの長期フォローアップ

前回までの、「忘れたころにLCH:再発と向き合い、見守っていく」や「LCHの晩期合併症 ~ 5年、10年、20年後 ~」にあったように、LCHは病気の治療が終わったあともずっと残っていく問題(「晩期合併症」や「再発」)があります。特に「晩期合併症」にはLCH特有のものが多いので、しっかりと主治医の先生にフォローしてもらうことが大切です。

今回は、LCHの長期フォローアップの大切さ(外来にずっと通っていただくことの大切さ)について解説したいと思います。

1.治療が終わってからどれぐらいの期間、外来に通うの?

LCHの治療が終われば、外来に通う回数は徐々に減っていくと思います。外来に通うペースは、LCHの発症時の病型や治療の経過にもよりますが、治療が終わって何年経っても、1年に1回以上は来ていただくことをおすすめしています。

というのも、LCHという病気は治療が終わった後も、再発や晩期合併症を起こす可能性があります。そして晩期合併症のなかには、治療終了後5-10年経ってからはじめて症状がでてくるものもあるからです。治療が終って何年経っても、なるべく1年に1回は、何か体調変化がないか、こころも体も成長しているか、場合によっては頭部MRIに微細な所見がないかなど、定期チェックが大切なのです。

元気だし、学校が楽しいし、友達と遊びたいし、仕事が忙しいし…そんな気持ちもわかるのですが、ぜひ主治医の先生と一緒に定期チェックをしてください。

2.長期にフォローしてわかったこと

日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ(JLSG)では、1996年からJLSG-96、その後2002年からJLSG-02という臨床試験を行いました。この試験に登録して治療が行われた300人以上の患者さんについて、その後現在まで継続して追跡調査が行われています。

このJLSGのデータや海外からの報告など、これまでの長期フォローアップのデータから、わかってきたことがたくさんあります。

1)みんなどれくらいの期間外来に通っている?

多発骨型(たくさんの骨に病変がみられる)の患者さんは、平均で10.6年、最も長く外来に通っている患者さんは21.5年でした。また、多臓器型(複数の臓器に病変がみられる)の患者さんは、平均で11.6年、最も長く外来に通っている患者さんは21.4年でした。

赤ちゃんの頃にLCHを発症した患者さんも高校生になっていたり、小学校で発症した患者さんは既に就職していたり、中には結婚したりしている患者さんもいたりします。それぐらい長い期間、外来に通ってくれている患者さんがたくさんいます。

2)5年、10年たっても起こる再発や晩期合併症

LCH 晩期合併症の発症率

「いつになったら、再発しないのか?」、「いつになったら、新しい晩期合併症が発症しないのか?」

正確な答えは現時点ではありません。LCHは一般のがんと違って、治療が終わって5年以上経ってから再発することもありますし、晩期合併症は10年以上経って初めてでてくることもしばしばです。なので、一般のがんよりもより長く見守っていくことが大切です。

図に示すように、晩期合併症として最も多い尿崩症はLCHになってから5年後までに起こりやすいですし、神経変性症についてはLCHになった10年後から起こる確率が増えてきます。また、身長の伸びが悪かったり、側弯が生じたりなど背骨や手足の骨の問題整形外科に通わないといけないような問題)も、LCHになってから10年後以降に起こることがしばしばあります。

これは、小さい頃にLCHになった患者さんが、どんどん成長しておとなになっていく過程で、症状がはっきりしてくるものが多いことも影響していると思います。

3)再発例では晩期合併症が多い

LCH 再発と晩期合併症との関係

LCH患者さんの調査結果から、再発例では晩期合併症がより多くみられることがわかってきました。また、中枢神経リスク部位の骨に変があった患者さんは、その後に尿崩症神経変性症を起こしやすいことや、尿崩症を起こした患者さんはその後に神経変性症や下垂体ホルモン分泌不全を起こしやすいこともわかってきています。

そのため、再発や重大な晩期合併症を防ぐよう、しっかりとLCHの治療を行っていくことが重要です。また、それぞれの患者さんの状況に応じて、起こりやすい晩期合併症に注意しつつ、長期にフォローすることが大切とされています。

LCHの長期フォローアップ

4.おわりに:長期フォローアップのコツ

長期間外来に通わないといけないことは、ご本人やご家族にとってはいつまでも病気が治っていないとか、再発や新しい晩期合併症が起こったらどうしようと怖くなってしまうのではないか、と心配が消えないのではないかと思います。でも、外来に通ってくれている患者さんは、みんな今自分がやっていること、これから頑張っていきたいことをキラキラした目で話してくれます。そんな皆さんのやる気を少しでも支えられるように、何か困ったことがないか、毎回の外来でその都度一緒に考えて対処していきたいと思って、日々の診療を行っています。

坂本謙一 国立成育医療研究センター 小児がんセンター

平成17年 京都府立医科大学医学部卒業後、京都市立病院にて初期臨床研修を行い、同病院小児科に勤務。京都府立医科大小児科に入局した後は、京都府立医科大学附属病院で小児血液・腫瘍の臨床に従事した。その後、京都府立医科大学大学院に入学し、白血病の研究に従事した。舞鶴医療センター、京都府立医科大学北部医療センターに勤務し、2018年4月から国立成育医療研究センター小児がんセンターフェローとなり、現在に至る。

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